REDLINE

REDLINE (ハヤカワ文庫JA)

REDLINE (ハヤカワ文庫JA)

「レッドラインは何でもありだろ。武器でもつけなきゃ、命がないぞ。第一、今じゃ俺もこっちが専門なんだよ」
照準をのぞき込み、砲身を上下させる。
「つけるわけねえじゃん。んなもん。俺らにとってのレッドラインはレースなの。加速装置以外はつけないよ。」
「お前は本当にバカで優しいってニックネームのままだね」
「馬鹿はついてねぇし」

映画REDLINEのノベライズ…ですが、牧野さんの作品になっていると感じさせられるもの。牧野さんでレースというと「王の眠る丘」という傑作があり、こりゃ鉄板だろと思って読んでみたんですが、予想通りでした。
話は宇宙最高峰のレースREDLINEの予選からスタート。“優しい男”JPは善戦するも最後に相棒のメカニックが八百長を働き敗北する。だけれども、補欠と言う形で運良く最高峰のレースに挑むことになるわけです。彼が何故優しい男と呼ばれるかと言うと、なんでもありなアルティメットレースの中で彼だけは他車を攻撃する武器を一つも装備していないわけです。レースをやっているんだという美学として。そして、八百長を働いた相棒とまた組むなど彼自身のポリシーを決して曲げようとしない。また裏切られる可能性もあるというのに。
そして他のレーサー達も一癖も二癖もある面々。マシンと一体化して絶対的覇者として君臨するマシンヘッド鉄仁、父を追いかけてきた娘のソノシー、ダークヒーロー役として名を売ってきたリンチマン&ジョニーボーヤ、お色気レーサーのボイボイ&ボスボス等々。己の美学を貫くそれぞれのレーサー達のレース模様だけでもお腹いっぱいなのに、さらにレース会場が独裁惑星で、このレースの開催を阻もうと攻撃を繰り出してくるわけで、最後まで息をつかせぬレース展開でした。命知らずの馬鹿どもによるレースの様はとても熱くドラマチックなものでした。各レーサーの描写に多くの部分を割かれていたので、充分ページはあるのにもっと長尺で腰を据えて読みたいと思ったぐらいです。映画の方もこれぐらいキャラクタが立っているんなら面白そう。少なくとも映画を見てみようかなという気持ちにさせる良質のノベライズです。圧倒的なスピード感と熱さ、何よりもその馬鹿馬鹿しいノリに魅せられたい方は是非!