ただ、咎人を裁く剣のように

「アンタは悪意を垂れ流す。俺にはそれが赦せない。だったら……そら、出会った時点でもう終いだ」

1巻で主人公に力を渡したヒロインが死ぬという、最初からクライマックス的な展開だった本作。正直あのインパクトが強すぎて、2巻ではどういうことを軸に話を展開するのかなと思っていたんですが、話の進みとしては遅いものの、1巻で拾いきれなかった従者であることに対するのフィナアルカナの思いの揺らぎ、そして蒼雷騎士の力を受け継いだ法介の騎士としての在り方を新たに起きる事件を通して浮き彫りにしていて良かったです。少なくとも前巻を前日潭に追いやる、物語の始まりという印象を受けます。さらに本巻では、事件について前巻の事件を思い起こさせる展開ながらも、感傷を切り捨てるような描き方が切なく、全てが変わってしまったんだなと印象づけられました。そんなこんなで前巻の伏線が消化されたと同時に、新たな伏線がさらに増殖するという…。
異形騎士と呼ばれる彼らは、自身も罪業を抱えながら、罪悪感を抱えた人の心が七つの大罪と呼ばれる感情を強く抱くことで変貌する、罪業と戦うことを使命としています。その為、時に彼らは実際に罪を犯した者ではなく、その結果として罪業に変貌した別の者のみを討伐しなければならないことがあるのですが、それに対して本当の咎人は誰なのかという問いかけは考えさせられるものがありました。この苦難の道行きを予感させる問いかけに対して、相手がどういう対応をするのかが楽しみです。
多くの単語にカタカナルビがふってあったり、能力にそれぞれ名前がついてたりと、中二的で一部には飲み込みにくい作品ですし、展開も苛烈でとても万人に勧められるような作品ではないのですが、人の罪とはなんぞや…なんてことを考えるのが好きな方にはいいかも。僕?当然好きな作品です。