煉獄姫 二幕

煉獄姫 ニ幕 (電撃文庫)

煉獄姫 ニ幕 (電撃文庫)

黒藤原再臨。タイトルの通り物語の第二幕と言った感じで、前巻での布石を着実に動かしていったようなお話。単体としては切り裂きジャックを思わせます。
前巻でその死によってアルトに精神的なダメージを与えたキリエが(群体なので死なない)、狂言回しとなって、悲劇的な事態を進行させていく訳ですが、彼女の使い方が上手い。相手の感傷を誘いながらも全く影響を受けず、事件を引き起こす邪悪な存在ってのは読む方にとってもなんともしんどいキャラクタです。また、彼女達が悪事を企む場所は、都市の吹きだまりのような悪所なんですが、そこらの描写も容赦ないなと。絶望が始めから漂っているような場所です。
そんな物語の中で、半ば人外でありながら人であろうとする、アルトとフォグのコンビと、その枷を外して完全に化け物として振る舞うキリエとイパーシの姿が好対照をなしていました。フォグの騎士としての意識の自覚と、アルトの精神の強まりが印象的でした。
また、ジョーカーのようなフォグの妹の登場がこの先にどういう影響を与えるのか、それを考えると十分劇的でありながらもまだ布石を打っている巻と言えるのかも知れません。
血塗られた事件を描きながらも、妙に現実感が乏しく、それ故に危機感を感じる様になるのは最後の方になってから。壊れてしまった彼女が引き起こすであろう第三幕はもっと大きな騒ぎになりそうです。楽しみ楽しみ。