イコノクラスト!〈6〉

イコノクラスト!〈6〉血族 (MF文庫J)

イコノクラスト!〈6〉血族 (MF文庫J)

「救世主」として異世界に召還された高校生・香芝省吾は、葛藤を越え、神の呪いに苦しむ人々を救うべく、巨大兵器「イコノクラスト」を駆ることを決意する。ある時「代行者」出現の報で出撃するが、帰還中の飛行船が「血族」と名乗る集団に襲撃を受け、省吾は「イコノクラスト」ごと強奪されてしまう。彼らの目的とは何か、そして彼らとともに現れた前々代救世主・レオンの意図は―?また、自らの目の前で、守るべき「救世主」を奪われ、失意の中でただひたすらに省吾の帰還を祈るメリニやペルテア、姫巫女たちの想いは届くのか!?


シリーズ6冊目。
この巻では殺されてしまった神を奉じ、自らを神に近しい存在であると任じている「血族」の元へと向かうお話。前々作では神の代行者に殺されることを至上の喜びとする狂信的な原理主義者を取り上げていましたが、この巻の血族の連中も同じベクトルでもっといびつな歪み方をしています。神に近い純血を守るために近親間での交配も辞さない彼らの姿勢は、どうにも気持ちが悪い。神がどのようなものかというのについては、ある程度予想はついていたのですが、ああいう形で血族と省吾たちのことと絡めてくるとは思いませんでした。
この巻では、神という存在がベールを脱いだのも大きいですが、なにより省吾が元々擬せられていた傀儡としての救世主ではなく、真に自分の意思で助けられる限りにおいて人を助けようと決意したということが、この先へ向けたターニングポイントとして大きいと思います。
また、省吾と離れて謹慎させられている姫巫女達の描写が挟まりますが、彼に対して好意を抱いていて篭りがちになってしまったメリニやペルテアは無論のこと、それ以外のメンバーも多かれ少なかれ、打算だけではなく省吾のことを思ったり影響を受けているのが意外でした。ラストで省吾が帰還することで、彼をうまく懐柔して利用しようとしているレネゲイドという組織に対して、このことが何かの影響を及ぼすのか楽しみです。新たな人も連れて帰ったし。
しかし、戻る手段が見えてきたことで、ラストがどうなるのか気になるなあ。