曙光の誓い

闇。疾走する馬。夜の草原。なんでこんなことになったんだろう?覚えているのは紅蓮の炎。燃え落ちるゲル。銃声。争う声。父の胸の黒いしみ。馬の背に必死に掴まり駆け抜けた。この後のことは、わからない。でも約束した。だから、行かなくちゃ―明日へ。少年の冒険が始まる。


あらすじのコピペじゃ分からんね、うん。舞台は戦中の満州と思しき架空の土地。
謎の物を発掘していた父親。しかし、ある日突然発掘地のキャンプが何者かに襲われて父親は殺された。命からがら父に託された荷を持って逃げ出した勝太郎は発掘地の近くの知り合いの遊牧民の家族のもとに身を寄せる。しかし、再度襲撃され、集落からの逃亡先で荷すらも奪われる。彼は逃亡する際の案内役として付いてきたサランとともに奪われた荷を追いかけることにするが…というお話。
作品の序盤の主眼としては勝太郎という少年の成長。しかし、彼は父親が死んだ後も常に笑顔でいることを自分に課しているような芯の強い少年。それ故に全てを抱えこみ文句を言われることもあるのですが、自分の無力さを痛感しながらも前を向いているその姿は、あまり悩める主人公という感じではないです。
むしろ、彼に同行するサランという少女の心のあり方の変わり方に作品においてはリソースを割いているのかなという印象でした。過去に自らの過失で愛する兄を失って、自責の念を抱え生真面目に頑なになってしまった少女に対して、道行きの途中でその心を勝太郎の行動が段々と前向きにさせていくところが見所。
そんな二人が参加する追跡行のグループは攬把(ランパ)率いる馬賊達。悪党っちゃ悪党なんですが、豪放磊落な彼と、常にポジティブシンキングな仲間達に、勝太郎が本当の一員としてとけこんでいくのが良かったです。
お話の筋立てとしては王道を行くもので、ジュブナイルという方がしっくりくる感じ(年齢設定が幼いというのも一因かも知れませんが)。突出して面白いという作品では無いですが、こんな物語も良いものです。多分まだ恋までは至っていない二人の、最後の淡い約束が爽やかな印象を残す作品です。