戻り川心中

戻り川心中 (光文社文庫)

戻り川心中 (光文社文庫)

著:連城三紀彦 イラスト: レーベル:光文社文庫
大正歌壇の寵児・苑田岳葉は2度の心中未遂事件で2人の女を死なせ、その情死行を歌に遺して自害する。女たちを死なせてまで岳葉が求めたものとは?滅びの歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを耽美に描く秀作「戻り川心中」(日本推理作家協会賞受賞)他、花にまつわるミステリー4編。
当時の時代に生きる女性達の描写がとても上手い。それぞれの短編についてゐるタイトルの花とその作品に出てくる男女の愛憎や情念が綺麗にかぶさり、身震いがするほどの怖さを受けました。記憶や人の心情をたどった話が多いため、物理的なトリックは表には見受けられないのですが、情念のために犯す計画に基づいた緻密な犯罪は、さすが連城作品の中でも評価が高い一品だと思わせるものでした。読後感がつらくなってしまうのは、愛がメインにおかれた犯罪が多いからでしょうか。どうしようもないやるせなさが残る作品もあります。収録作の中では話としては「桔梗の宿」が、トリックを考えると「桐の棺」が好きです。光文社文庫版は5編しか収録してないとはなあ、花葬シリーズ全部収録したハルキ版を買えば良かった。