おせっかい

おせっかい (新潮文庫)

おせっかい (新潮文庫)

著:松尾由美 イラスト: レーベル:新潮文庫
人気ミステリー作家は、誰に原稿を書かされているのか!?小説雑誌に掲載されている橘香織のミステリー「おせっかい」の連載第1回を読んだ古内繁は、作品に思い入れるあまり、同じ世界を夢にまで見る。翌月、連載の続きを読んだ古内は驚愕した。自分の見た夢の続きが、そのまま小説化されていたからだ。小説の中に入りこむなんてことが、ほんとうにあるのか!?橘香織とは何者だ!?いっぽう作家・橘香織の周辺でも奇妙なことが相次いで起こりはじめた…。
松尾さんの文庫落ち作品。不思議な設定の上に成り立つミステリーでしょうか。なかばボーダーの上のような作品です。
作品の進行は女性作家が書いている原稿の中身と現実の部分が交差しながら進んでいくんですが、作品の内と外のどちらが真実なのか、段々と内側の部分が外に浸食していく様な感じがして不思議でした。クラインの壺のような酩酊感が。文字通りおせっかいなひとがいるために転がり出す展開はどうなるのかと思っていましたが、作者の死が作品の終焉を迎える終り方は突き放されたようで、手放しで面白いという訳ではないけれど、少し奇妙な後味が残る作品でした。
なんか小説というものの怖さを少し感じてしまいました。
作者本人の実体験が反映されたと思われる女性作家の話が興味深かったです。