RUN RUN RUN

RUN RUN RUN

RUN RUN RUN

著:山下卓 イラスト: レーベル:徳間書店
高校二年、十七歳の冬。わたしは魔女にさらわれた。二十四歳、人生崖っぷち。あたしは深夜のバッティングセンターで捨て猫を拾った。三十歳リーチ、いまだに自分捜し継続中。私はいきなり後頭部に空き缶をぶつけられた。―それが、わたしたちの旅のはじまりだった。

山下さんの新作。一般文芸を結構意識した感じの作品でした。
真面目で被害妄想気味の編集者マリ子、勝ち気で強気なホステスのルナ、そしておとなしくて、時折何を考えているのか分からない様な少女マコト。この三人が新潟へ旅をしながら過去に触れ、前向きになるロードストーリー。
その三人が疑似家族として、ぶつかり合いを繰り返しながら姉妹の関係になっていく姿がとても良いです。どこかが挫折している三人が前向きになって行く過程が、持ち味である細かい描写のおかげで映えてよかった。ダメな三人に自分もかなり共感する部分がありました。
大きなスポットを弱気の編集者に当てているのも変わっていく姿が良く現れたと思います。
彼女たちの心情だけでなく、さりげない風景の描写が挟まっているのもグッド。
優しい作品で、山下さんのBLOODLINK(外伝は二作とも傑作だと思う)の斬りつけるような痛みを伴う切なさはここにはないけれども、この作品もアリではないかと思いました。