凶眼 EVIL EYE

兇眼―EVIL EYE (徳間文庫)

兇眼―EVIL EYE (徳間文庫)

著:打海文三 イラスト: レーベル:徳間文庫
隅田川沿いの高層マンションでルポライターが殺された。容疑者は防犯カメラに映っていた身元不明の若い女。警備員の武井は、死体発見者の作家・高森夏子に雇われ、事件の渦中に飛び込む羽目に。
主役は探偵達ではないですが、アーバンリサーチシリーズの一作。ハードボイルド作品です。
過去に心の傷を負った男を主役に据えている割に、そのことについては物語の途中からあまり触れられなかったのが驚きでした。暴力団も絡みながら事件の謎を追いかける前半と後半では別の作品の様な感じもします。もしかしたら彼はあくまで導入に過ぎず、後半に掛けて彼が探し出すことになる子供達がこの物語の真の主役なのかも知れません。
終盤の、子供達が夢見た世界が段々と内部対立や周りの手によって浸食されて崩壊にいたる様は見事。大人の世界に抵抗する等身大の少年少女達の達の姿が切なかったです。
何が起きても、淡々と短文で綴られるスタイルも作品にあったものでした。少し甘くほろ苦い余韻がラストに残るいい作品だと思います。