断章のグリム1

著:甲田学人 イラスト:三日月かける レーベル:電撃文庫
曰く、この世界に存在する怪現象は、全て<神の悪夢>の欠片である。この悪夢の泡は人間の意識に浮かび上がると、急速に人の恐怖や悪意や狂気と混ざり合う。そして、現実世界を変質させながら溢れ出し、悪夢の物語を作り上げる。だが、浮かび上がった悪夢の泡が非常に大きかった時、個性が希釈されて物語の『元型(アーキタイプ)』に近くなる。明示的、暗示的、様々な形で『昔話』や『童話』のエピソードに似たものになる──。普通であることが信条の白野蒼衣と、過去を引きずりつつ悪夢と戦う時槻雪乃。人間の狂気が生み出した灰かぶり(シンデレラ)の悪夢の中で出会った二人が辿る物語とは──!?


甲田さんの新シリーズ。痛い、本当にこの人は痛みの描写が上手い。作中の眼球を抉られる描写はきっついものがあります。
お話としては今では世間に膾炙したグリム兄弟が編纂したシンデレラの形をとって、悪夢の泡の影響が人の身に現れ、それと戦うというもの。そのせいでお得意のエグイ描写がてんこ盛りといった感じです。
Missingに比べると、ライトノベルらしさ(というのか分かりませんが)多く、訳の分からないというホラーの部分での怖さというものは軽くなっている印象。逆に童話をある程度知っているだけに、そちらの方で泡の影響を受けた人間がどんなものを引き起こすのかというのを連想する面白さや、怖さがありました。
変異した人間に対処する雪乃や主人公を始めとした騎士団側も、同じように泡による悪夢の影響を受けたものの変質せずに生き残り、断章の力という同じ力を持って戦うという設定も良かったです。
雪乃が断章の力を持つと同時に抱えた過去の絶望を、同じように力を持つことになった主人公が助けることが出来るんでしょうか。
しかし、これはメルヘンじゃない。