いつか、ふたりは二匹

いつか、ふたりは二匹 (ミステリーランド)

いつか、ふたりは二匹 (ミステリーランド)

菅野智己は母が再婚した四年生の頃、突続、眠りに就くことで猫の身体に乗り移れるという不思議な能力を持った。身体を借りている猫にジェニイという名前をつけ、巨大なセントバーナード犬のピーターと友達になった智己が六年生のとき、クラスメイトを含め三人の女子児童が襲撃されるという事件が発生し、一人が重態に。昨年秋に、同じく町内で起きた女子児童誘拐未遂事件の犯人と同一人物の仕業のようだ。被害者の共通点は、智己の義理の姉久美子さんが家庭教師だということ!智己はジェニイになって、ピーターとともに事件を調べることにした。


西澤さんがミステリーランドに書き下ろした作品。
西澤さんというとSF的な要素とミステリーを組み合わせ作風が印象的ですが、この作品においても、眠っている間猫の体を借りて歩き回れるという、ファンタジー風味も入り交じった部分が特徴的です。
猫の体を借りて、犬のピーターとお昼寝をしたり、探検を行うのが小学生の頃に戻ったみたいで楽しい。大人びているというか老けているような主人公がそれを行っているギャップも面白いです。
お話の骨格もキッチリしているし、中でも、少し苦くてほろりと来るラストと、最後に明かされる軽いサプライズがとても良かった。
子供が変質者に襲われるというテーマを扱っている割には、いつもの西澤さんみたいな毒のある悪意という部分が薄くできているので、子供に対しても勧めたくなるような作品でした。