ムシウタ07 夢遊ぶ魔王

ムシウタ 07 夢遊ぶ魔王 (角川スニーカー文庫)

ムシウタ 07 夢遊ぶ魔王 (角川スニーカー文庫)

“虫憑きが消える街”の調査を命じられた特環局員・緒方有夏月。だが潜入先の高校で、ビデオカメラを常に構えた少女・愛恋によって報道部へ強制入部させられてしまう。美術館のドッペルゲンガー、人喰い廃病院、天使が舞い降りる電波塔…愛恋に引きずられるまま、街を脅かす“魔王”の痕跡を取材するうち、有夏月は“かっこう”すら知らない世界の危機のただ中にいた!―それは電波的な彼女による、最高で最悪の大スクープ。


今回の作品も主人公達はほとんど登場せず、外伝的作品と位置づけてもいいかな。かっこうへの復讐を誓っていた有夏月が、任務で他の街に派遣され、自分を見つめ直していくことになります。
自らの過ちを認められないのが、事件を通し脇役として一人の少女と関わることで、本当に向かうべき敵と、仇と目していた人間がもっと前からそのことに気付き足掻いていると知り、変わっていく姿が良かった。
本筋の方は、虫憑きと人間、どちらが本当に恐怖を与える存在なのか考えさせられる作品でした。登場する二人の「魔王」の対比が何とも鮮やか。現在進行形の魔王の、手段を選ばず虫を操っていくうちに、正しいと信じている思いが変貌し段々と歪んでいく姿と、一度は挫折した魔王の、それでも抱き続ける報道というものへの信念の強さが、人という存在に対する想いの強さがとても印象に残りました。この二人のためにこの作品はあるというべきでしょう。
希望があるために、前作みたいに悲しい終り方にならなかったのも嬉しかったです。とても面白かった。素晴らしい。
死者が残す影響というのを大きく感じさせられました。