シフト―世界はクリアを待っている2

転校生・赤松祐樹には秘密がある。 眠ると異世界へ 《シフト》 する不思議な現象。
祐樹は、《シフト》 した異世界では、異形のとかげ男・ラケルとして、隠者のような生活を送っていた。だがしかし、異世界での出来事が現実世界に “侵蝕” し始めた時、祐樹は一つの決断を下す。「向こう」 のラケルは獅進・リカルトと対峙し、「こちら」 の祐樹は日野鷹生との勝負に臨む。そして、その結果がもたらすものは――。


シフト二冊目。シフト世界と現実の世界を眠ることで行き来する少年少女達の物語。
前巻では比較的現実とシフト世界が分かたれているという印象があったんですが、シフト世界での強者を倒すために現実の方で当人を殺してしまったことがあったというのを見て段々と薄ら寒いものが。極めつきは赤松が現実でも魔法が使えるというあのくだり。皆が見ている夢の世界だから、どんなにひどいことがあっても戻れば大丈夫というわけではないところが何とも恐ろしい。
ただ、強い怪物であるがゆえに「魔王」として君臨することを余儀なくされた過去があるために、善人であるとはいうことが出来ず、さりとて悪人になりきることも出来ないラケル=赤松が、苦悩しながらも出す答えはすがすがしい。その過程で挿入される、シフト世界をクリアする条件と思われていた、勇者に倒される為に、「魔王」として「勇者」と対峙した過去も面白いです。
また、今回は現実世界の割合が結構大きいのですが、シフト世界では戦士である日野と、セラである少女Aこと宮沢沙緒そして、今作のキーでもある高嶋。絞り込まれた登場人物達が、赤松は知っているけど、シフト世界でのことを知らないのに絡んでいくのは何ともおかしい。彼らの魅力は作品にとってかなり大きいんじゃないかなと思います。
さりげなく現実とシフト世界で齟齬が起きたときのこともフォローされていて、世界の方についても少し見えてきた感じがします。続編も期待大。