うれしの荘片恋ものがたり ひとつ、桜の下

うれしの荘片恋ものがたり ひとつ、桜の下 (富士見ミステリー文庫)

うれしの荘片恋ものがたり ひとつ、桜の下 (富士見ミステリー文庫)

桜の森の奥、彼女は震えていた。切りそろえられた前髪に、花びらをほつれさせて。その姿を見た瞬間、僕は―。立花山学園の一隅に佇む木造学生寮・うれしの荘への入寮日、僕・甘利直志は本多瀬名さんに出会い、恋に落ちた。彼女も新入寮生だった。ワガママで横暴な従姉妹・鷹姉が寮長だから、甘い生活なんて考えてなかったのに、本多さんと始めた寮生活は、心がざわめくことばかり。本多さんは、窓際の席が嫌いらしい。何かを決意してこの寮に来たらしい。感動すると、ぱんっと手を叩くクセがあるんだな。…可愛いな。なぜか鷹姉に邪魔されてばかりだけど、僕は彼女に見つめられるたびに胸を高鳴らせ、彼女を知るたび深い喜びに浸される。もっと本多さんを見つめていたい。本多さんのことが知りたい。僕は本多さんという女の子の謎を解きたい。そして、彼女を笑顔にしたいんだ。


入学して寮に住むことになった主人公と本多さんを始めとした寮に住む人々の日常を描いた物語。
日常の中の様々な謎を解きながら、本多さんの中に残るトラウマに迫っていく構成はまあまあ。寮の(荘のというべきか?)住人も、鷹姉を始めとして個性的なメンツなので、そちらのドタバタ話の方が面白かったです。様々な年代が住んでいる、少し懐かしい寮生活なんかを読みたい向きにはいいかも。モチーフはめ○○○刻らしいですしねー。
ただ、メインとなる謎の要素が日常系ミステリといっても少々弱い。暗号系の謎が多いんですが、あまりにも本筋に絡まない部分が多すぎて、存在する意味があるのか? と思ってしまうのも致し方ないと思います。その中では、飲み会の暗号はちょっと受けてしまいました。
もしあえてカテゴライズするとしたら、恋愛が絡んだ青春ものとして捉える方が吉。まあ、富士ミスですし?
しかし、ヒロインは鷹姉の方に違いない、そう思うんだけどな。