風、天を駈けよ―ソードギャラクシー

風、天を駈けよ―ソードギャラクシー (富士見ファンタジア文庫)

風、天を駈けよ―ソードギャラクシー (富士見ファンタジア文庫)

男は戦い続けていた。白銀に光る刃を振り、襲いくる敵を次々と斬り伏せる。それが武士と呼ばれる彼が、生まれ生きる世界―戦国と呼ばれる時代だから。だが男が目覚めると、そこはまったくの別世界だった。気が遠くなるぐらいの年月が流れ去り、目の前に広がる風景は無限の宇宙。故郷・地球を遠く離れた異星の地。しかしそこで彼を待っていたのも、“地球連合”と星系国家“帝国”との間で繰り返される激しい戦いであった。そして、男はまた戦い続ける。天知助左右衛門尚虎―通称スケザ。三千年間冷凍保存されていた侍。未来宇宙で侍が大暴れ!スケザの刀に斬れぬモノはなし!!天下無双、猪突猛進。剣豪スペース・オペラ開幕。


荻野目さんの富士見上陸一作目。あらすじだけ見たら、未来の世界に飛び込んだ侍の視点で活躍するお話だと思っていたんで、ここまで徹頭徹尾トリックスターな存在であると思っていませんでした。というかバカ? 空気を読まず戦闘でも会話でも引っかき回してくれるところは、あきれるを通り越して笑ってしまいました。おかげで未来の地球の人間である主人公の影が弱っちい上に薄い、薄い。ちょっといい雰囲気になったマリオン姫とも別れ別れになってしまいますしねえ。誰を中心に据えようとしているのか、いまいち分かりにくいです。
スケザは自分は戦いしかしない人間だというのに対し、この時代の武士は別にまだ専業じゃないから役割分担はなされてないとか、いくら日本刀を強化した単分子ソードでもここまで強いのはおかしいだろうとか色々つっこみたいところはあります。まあでもそれは脇においといて、艦隊戦に生身でつっこむようなぶっ飛んだお話は読んだことがなかったんで、そのあたりは肩の力を抜いて楽しめました。
この先は宇宙を分けた争いの話として展開しそうですが、上手く謀略話の方に展開できるのかな。この巻だけ取り上げると中途半端で、人間ドラマとして考えると正直微妙なお話でした。