哀しみキメラⅡ

哀しみキメラ〈2〉 (電撃文庫 1285)

哀しみキメラ〈2〉 (電撃文庫 1285)

矢代純がその家に踏み込んだとき、男はすでに死んでいた。そしてその傍らには、手負いの動物を思わせる、一人の少女がいた。伯父を呪い殺してしまった少女、森山真里。彼女の生活がおかしくなり始めたのは、二カ月前のあの日からだったという。一月二十八日の、京都。純はあの夜の闇と、〈モノ〉が跋扈する町の光景を思い出し、少女を連れ帰る。同じ頃、水藤深矢は橋の上で何者かに襲われて──。少女の停滞していた十年間と、三人のキメラの静かな二カ月間が終わり、めまぐるしい一週間が始まる……。
 

キメラとなってしまった三人が除霊相談の中で、京都でモノに憑かれてしまった一人の少女と関わることになります。前作がすっきりした終り方を迎えていたので続編はどうなるか。という部分があったのですが、とても良くできていたと思います。
全く関係ない除霊話を一本につなげていくストーリーもさることながら、きつい展開を淡々と描き、何とか強く生きようとする姿が切ない。彼らの話が過去に及んだときや七倉との会話もそれを印象づけるものでした。
また、人でなくなったとしても人のように生きようとする主人公達と、人でありながらそこから外れて特別なものに憧れる人の対比が鮮やか。「俺たちは化け物だからな。化け物は人一倍優しくなきゃ、人間のふりもできないんだよ」という台詞が哀しくうつります。
いわばもう一人の主役である、満たされなかった家族関係を求めて彼らについて行こうとしていた真理が、ラストで日常に回帰していくまでの描写も綺麗でした。続きがあれば期待。