恋のドレスと薔薇のデビュタント

仕立屋『薔薇色』は、ロンドン郊外の町、リーフスタウンヒルにある小さな店。店主のクリスの作るドレスは恋をかなえると大評判。男爵令嬢ファニールもまた、恋のドレスを注文しにやってきた。親に決められた結婚を目前にして、名も知らぬ初恋の人に思いをうちあけたという。どうやら、その男性はクリスが思いを寄せる公爵の令息・シャーロックのようだが……?


シリーズ三冊目。男爵家の恋を知らない箱入り娘が今回のお客様です。
メインの話の筋は大体読めてしまうのですが、望まない恋を前にして、何とか自分の憧れる恋を見つけようともがくファニールの姿が健気です。自分で決めることができない彼女がケニルと出会い、自ら道を選ぶ姿はとてもいい。その相方となるケネスはちょっと情熱的すぎますがね。また、キーパーソンとなる、婚約者の愛人であるイレーネという存在も闇のドレスの件もあり、ミステリアスで良かったと思います。物語の中で何をするか分からない怖さを煽るような役割が上手い。
シリーズ全体の主役の二人についてですが、終盤でクリスとシャーロックの二人がこれまで禁じていて、しまい込んでいた自分自身の恋心に、やっと気付いたのが大きな前進。恋に関して純で初心な二人のこのゆっくりした進み方は、可愛らしいんだけどとてももどかしいです。この恋心が相手に伝わったりしたらどうなってしまうんでしょう。
そして、クリスを支えるパメラの方も気っぷのいいキャラクターだと改めて感じさせられました。エピローグの彼女と医者のイアンの掛け合いが面白い。この二人もいいコンビになりそうだなあ。今後も激しく期待です。