ヒドラ HYDRA 1

雪に閉ざされたルルブの山中で、難破した飛行船から双子の少女ウミとハナを助けたアラタ。額に傷跡を持つ、強い瞳の少女ウミと、無口で内気なハナ。対照的な二人の少女の美しさと不思議な存在感にアラタは興味を覚えるが、吹雪を避け駆け込んだ収容所で、囚人の一人が突如、ウロコ状の奇妙な水疱を発疹し死亡するという事件が起きた。そしてその奇病が収容所に蔓延すると、ウミはアラタたちにハナを預け姿を消す。(あの少女が来てからだ)村の神父見習い、アラタの兄エイトは、収容所にやってきた監査官と共に、密かにウミを調査し始める。その頃、行くあてをなくしたハナの面倒をみるアラタの身体に、異変が現れ始め―。ヒドラ―それは夜空を泳ぐ独りぼっちの星。


吉田さんの新シリーズ。前シリーズが大好きなのでデフォ買いでした。したら、続くということで感想を書きにくいのですが。
前シリーズとは一転、山奥という閉鎖環境で外部から闖入者が現れるというお話。
怪しげな姉妹の到来と共に死刑囚の収容所に吹き込んでくる嵐。その舞台設定が匂わせる沈鬱な雰囲気が崩れるように次々に起こる事件は、恐怖と共におぞましさを感じさせられます。常に姉と共にいないといられない妹、何を考えているのか分からず人の死にも全く動じない、事件の幕を開いた(らしい)姉という設定もまた、何か分からない怖さをかき立てます。姉がどんな力を持つのかが伏せられているあたりもそれに彩りを添えている感じ。
それによって、ハナとアラタとの軽い心の交流といったライトなはずの部分も、全体に呑まれてほとんど死んでしまっているのが残念なところです。
お互いのことを気遣いすぎるあまり、仲が悪くなっているアラタとエイト、気の良い叔父である医者のタモツらが住んでいる村の方にこの嵐がもやってくるであろう次巻。どういう決着になるんでしょうか。これだけコンプレックスと葛藤を抱えながら向き合おうと考えているアラタとエイトの内面を描いたから、彼らによい終り方をして欲しいところです。不幸な幕切れの前触れとも言える部分もあるんですがね。退廃的な雰囲気がイラストと相まって何とも気持ち悪い一作でした。