彼女はたぶん魔法を使う
- 作者: 樋口有介
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/07/22
- メディア: 文庫
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (78件) を見る
昔、講談社で出た作品が出版元を変えて再販されました。私立探偵をやっている男が事件と美女に翻弄される物語。
ハードボイルドの作風だとかっこいい主人公が多いわけです。けれども、この主人公はしまらない。かっこいい気障な言葉を言ったりしても、恋人を初め女性陣に痛いところを突かれて嫌な汗をかいちゃったり、果ては別居してる小学生の自分の娘にまでいいようにやられてしまう始末。頭の回る娘さんだからなのかもしれませんが、加奈子ちゃんは良いキャラクターでした。そんなこんなで、本当はかなりかっこいいはずなのに、柚木が周りに翻弄されてあたふたする姿はこういった作品ではなんか新鮮でした。かといって完全に軽薄な存在というわけでもないのがまた良し。しかし、解説の方も書いていたけれどラストシーンのその後は見てみたかったなあ。修羅場、修羅場。
また、うっすらと明かされる過去を背負っているはずなのにほとんど明らかにしない、いわゆるハードボイルドな一面が彼をまた、魅力あるキャラクターにもみせています。
謎の方はとりたてて(失礼)インパクトがあるという感じではなく、目立ったところがなかったですが、きっちりとした捜査の部分が見せられていたのが印象的。真面目な人と見えていた依頼者の姿が段々と変わっていくのも面白かったです。読んでいるとちょっとつっかかるところがありますが、作品のスタイルに文章があっている感じでした。