神様のおきにいり

神様のおきにいり (MF文庫J)

神様のおきにいり (MF文庫J)

稲村智宏には秘密がある。ごく平均的な高校一年生だが、その秘密があるため微妙に友達づきあいが悪い。実は、妹のような少女・珠枝が同居していることを隠しているのだ。ところがある日、国土交通省の男が現れたことで、智宏と近隣に棲む妖怪たちとの交流が始まることになる。闖入した妖艶な桜の精や石の怪に、穏やかだった日常は賑やかながらも楽しい生活に一変するのだが…!?新進気鋭が贈るネオファンタジック・フォークロアの御開帳です!第2回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作、妖しく楽しく颯爽登場。


新人さんによる、家神とその家主の少年を主人公とした物語。
妖怪達との日常を淡々と描いた作風はほのぼのとしていて良かった。智宏が家神様を表には出そうとしないけれども、過保護なぐらい大切にしていて、それを珠枝本人に逆手に取られておちょくられていたり、近所の妖怪が見えるようになってあたふたしたりしている姿が微笑ましかったです。いたずら好きな神様と心配性の少年の二人の関係がとても上手く切り取られていて、日常系のほんわかした話として読みやすいし、成功していると感じました。桜の精を始め、周りを囲んでいる妖怪達のキャラクターも魅力的。
そういった部分が強い前半の妖怪達が見えるようになってからの日常を描いた部分に比べると、後半の幼馴染みを悪意を持った妖怪から守るところからの一連の戦闘展開がどうしても乗り切れない感じが。各々の悩みなど、重点的に描かれるべき部分が多すぎてぼやけてしまったのかなという感じでした。いっそのこと幼馴染みよりも珠枝と主人公の関係性に絞っても良かったんではないかな。
ただ、智宏が記憶がないのに何故家神様を大切にするのか?というあたりから導き出される展開や、ラストのあの締め方はイラストも相まってとても上手かったと思います。この作品の続きも良いですが、また別の作品も読んでみたい。