レジンキャストミルク〈5〉

夏休みが終わり、二学期。束の間の平穏を取り戻した晶たちの前に、双子の転校生がやってきた。何故か晶に妙に懐いてくるふたりの出現は、硝子や芹菜に波紋を投げ掛けていく。しかしそんな中、突如として学園中を巻き込んだ異変が起きる。それは今までとは規模の違う、日常を真正面から侵蝕する非日常だった。否応無しに巻き込まれていく友人たち。晶と硝子は戸惑うが、敵の罠は狡猾にふたりの喉元へと牙を剥き、そして―。


一気にクライマックスがやってきましたな5巻目。新たに美男美女の双子の転校生が学校にやってくるの巻。日常と非日常の壁が壊されて、晶が必死で守ろうとした日常が完全に覆されてしまいました。藤原さんの本領発揮。
もう、ほんとここまでやられなければならなければならないことをしたのか、と言いたくなるような晶に対するむごい仕打ちは流石。前半で歪みを抱えながらも皆と打ち解けた日常を過ごしているはずが、非日常に足を突っ込んでいることを認識させじりじりと不安に追い込んでいく手管がすばらしかったです。そこからやってくるいきなりの暗転も。
硝子の人間的成長がなぜ終わりをもたらすのかということが、全一の力の全面解明とともに説明がついているのだけれども、それを利用して無限回廊は何をしたいのか、謎は深まるばかり。硝子が感情を持ち始めた様の描写が良かったのになあ。
ところで、ずっと友達であったはずの良司の思考の動きがあまりにも独りよがりに偏っている気がして、いきなりあそこまで極端に移るか?とは思ってしまいます。良司については本人が友達のつもりで、芹菜に片思いをしていたからああ歪んだんだ、という言い方も出来るとは思いますけれどねえ。敵に回る者たちの思考が理解できないので、必然的に晶の側の人間に対する思い入れが強くなるというか。作者はどこまで意図してあそこまでの描写をしているのでしょうか。圧倒的なまでの全一の力が分かって、親しくなりかかっていた殊子や蜜にも突き放されてしまうと鬼なんですが。
次で最終巻でしょうか。結末がどうなってしまうのか、攻勢に転じることが出来ない展開が歯がゆいです。