黄色い花の紅

黄色い花の紅 (スーパーダッシュ文庫)

黄色い花の紅 (スーパーダッシュ文庫)

法の秩序が変化し銃の所持が認められた日本。工藤商会の白石奈美恵は府津羅組の依頼を受け、組長の令嬢・紅花を救助に向かう。そこで遭遇した異様な仮面をつけた大男との闘争が続く中、紅花を守る奈美恵。その渦中にありながら守られるだけの紅花は、次第に自らも「力」を欲するようになる…。


全編に渡ってガンアクションが続く、スーパーダッシュ文庫新人賞大賞作品。
外国からヤクザなどの勢力が乗り込んできて、銃の所持が許可された日本という設定。そこで中国のヤクザと抗争を繰り広げている府津羅組の娘の紅花を軸として、彼女を守るように依頼された工藤商会の人々が繰り広げる抗争の話。しかし、ここ電波的や紅に負けないぐらい治安の悪い世界じゃないか。
第一部では奈美恵の視点で描いていたんで、てっきり二人の関係の変化を描くといった話なのかなと思っていたんで、第二部が始まるや否や外した構成に驚きました。ただの依頼人というにはあまりにも熱心に守り、それに依存している二人の関係がまるで恋人みたいです。百合かな?
そんなこんなで、第二部にはいると主役交代。ひたすら彼女を守ろうとする奈美恵から、突き放してきつい現実を突きつけて彼女に自ら進む道を選ばせようとする、副社長の黒田と相対する紅花が主役に。ここからの、事務所の面々に見守られながら、銃を手にすることによってそれまでの言われたことに従う人形のような存在から、決断が出来る人間として成長していく紅花の成長する様が良かったです。やくざの抗争というハードな展開の中で、冒頭の敵とも一戦交えるなかでの彼女の成長が清々しい。きついことを言いながらも、彼女が決断した後はそれを手助けする黒田のキャラクターも好みでした。
また、あわせて進む物語の方もアクション部分にスピード感があって読みやすかったです。
ただ、銃の描写がかなりこだわっていて、正直出てくる銃の名前ぐらいしか分からない自分にとっては、かなりその描写に割かれているのが苦痛。どんなタイプの銃か文章だけの描写では正直ちんぷんかんぷんなので、せめて銃の外見を描写したイラストなんかでもついていれば、描写する上でももうちょっと分かりやすかったと思うのですが。
あとがきが面白かったです。