ときむすび

ときむすび (ファミ通文庫)

ときむすび (ファミ通文庫)

普通の高校生、千波タクトは、幼馴染みの秋条真衣亜の好意を知りながら、彼女の姉で才色兼備の果璃絵に想いを寄せていた。ある時、果璃絵の様子がおかしいことに気づいたタクトと真衣亜は、その原因を探り出そうとするのだった。しかし、その行動が2人を、さらに周囲の人間を不可思議な出来事に巻き込んでいき、そして運命の祭りの日を迎える…。届かない想い、どうにもならない愛を、静かにファンタジックに奏でる青春ストーリー。


築地さんがファミ通文庫に進出。少年少女たちが織り成す青春といった印象の前半、そのなかで気持ちの齟齬から見えてくる暗い部分、急転直下の結末といった後半からなっています。
序盤の平和な日常、そこに現れる昔の幼馴染の転校生といった学校の空気がとてもよろし。仲の良い友達同士の日常の描写や、毎日起こしてくれる幼馴染と転校してきた幼馴染との三角関係なんかの部分がほのぼのとしていかにも「日常」というかんじでよい感じ。設定はベタですが、登場するキャラクターが魅力的でした。そんな日常に染み入ってくる悪意の影のあらわされ方も不気味な感じでよかったです。
ただ、こんな感じのラストはどうも好きじゃないです。決してハッピーエンド好きというわけではないのですが、あの展開なら個人的にはせめて追悼の一言でもあれば…。そんな印象を差し引いても、彼女の思いと彼女自身が途中からフェードアウトして完全に空気のような扱いになってしまうのがとても不満。ラストでは祭りの夜という舞台は整ったものの、そこに登場する人たちが整っておらず、物語を追っている途中でぽいと放り出されてしまったような印象を受けました。ところで、どこかで主人公はどうして恨まれてしまったのか分からなかったのかなあ。
最後まで読んで、真の主人公はある意味彼女だったんだなと思わされてしまう話でした。終盤の会話シーンの選択がとても切ない。