シャドウ
- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/09/30
- メディア: 単行本
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母親の死を契機に、少年の周りの世界に綻びが見えてくるなかで、家族の形を取り戻そうとする少年の奮闘は実るのか、というお話。様々な視点から描かれていくうちに冒頭ではきちんとした姿をしていたはずの誰もが疑わしく見えてくるなかで、きちんとはってあるはずの伏線を見落としてしまうのは感嘆すると同時に悔しい。読みやすく(敷居を低くして)さらにテーマ性をも織り込んで作った中で、構成をこれだけきちんとして、伏線を張った手腕はもう脱帽するしかないです。これだけたくさんのものを詰め込んでいるのに、適度な長さで破綻なく纏めているのは新人離れした力を持っていますねえ。
分かりやすい伏線があって自分が思ったとおりに展開していく快感、しかし真相はそこをすり抜けて、何度もそれを覆す展開は物語との乖離もなく、本当に素晴らしかった。そして騙され続けたが故に、全ての真相が明らかになったラストはすっきりとして清清しい。ただ、家族の姿を取り戻そうとした少年に対してあれを救いといってよいのか、そしてラストを演出するために用意された物事に痛みを覚えます。物語のつくりが素晴らしい作品だけれど、お気に入りではないなあ。