円環少女 (4) よるべなき鉄槌

円環少女 (4) よるべなき鉄槌 (角川スニーカー文庫)

円環少女 (4) よるべなき鉄槌 (角川スニーカー文庫)

相似大系魔導師が挑んだ戦いによって、“公館”は戦力である刻印魔導師の三分の一を失っていた。手薄になった犯罪魔導師の取り締まりに奔走する専任係官の仁は、蛍のような光を放つ魔法構造体を見つける。メイゼル、きずな、なぜか巻き込まれた寒川紀子の3人は、魔法構造体の正体を探るため“公館”の地下に広がる迷宮へと潜入するのだが、そこには魔導師たちの恐るべき罠が張り巡らされていた!


シリーズ4巻目。夏休みに入った仁ときずな、メイゼルの日常を描いた前半、そこから後半の戦闘シーンに入るまでは、これまでより読みやすくて驚きました。
メイゼルときずなが一時的に仁のもとに居候することになった彼女達の日常がほのぼのとして楽しい。寒川さんも交えて夏休みの大冒険ですよ。各自が成長しているのも見てとれるなかで、メイゼルの突っ走りっぷりがさらに加速しているのが笑えました。
そんな生活に仁と妹の過去を絡めつつ対比させることで、当時との仁の立ち位置の変化と、今でも抱えている悩み、そして足掻きを浮き彫りにしているのが上手い。妹がいた頃に誓った願いの重さが、今も実現できていないがゆえに響きます。冒頭のシーンを思い返すにつけ、もう取り戻すことの出来ない妹との生活のひとコマひとコマが切なく感じました。そして妹との生活を守るために、さらりと描写されてますが仁が、そして妹が払っていた犠牲を重く感じてしまう。
他の勢力としては裏で蠢いていたのがやっとその姿を現してきた、王子護ハウゼンの動きなんかも見所ですが、何といってもエレオノールの復活。それまでとは違い、神の意思を実行する存在ではなく人としての決断を下したがゆえに、神聖騎士団に再び存在を消されることになって、頼るべきよすがを無くしながらも神を信じる彼女がこの先どう物語に絡んでくるのか楽しみです。
またこの先、魔法では絶対的な無力者である悪鬼が、唯一持っていた魔法を無力化することが出来るというアドバンテージを無効にできることで、今までぎりぎりで保たれていたバランスが崩れ、引金が引かれてしまいそうで怖い。最強ではあったが力押しになっていた前巻でのグレンのやり方に比べて、ずっと嫌らしく現実的な今回のやり方、どう落ち着くことになるのでしょうか。