トリプル・スパイ

犯罪・防犯産業立国を掲げる銀河辺境の惑星王国にスカウトされてしまった大詐欺師のショウが犯罪ドリーム・チームを率いて行う次なる仕事は、開戦間近のリストビア帝国の兵站計画を探り出すこと。ところが、スパイとしてリストビア軍の近衛師団に潜り込むショウのために準備された身分が、誰かに先に使われてしまった。ショウの他にもスパイが紛れ込んでいるのか、それとも―!?


犯罪ドリーム・チームの作戦2つめ。
宗派によって食事に区別がある宗教によって支配が行われているリストビア帝国。その国家に、軍隊のための食料を供給したいと考えていたが、それまでとは違いなぜかそれを拒否された食品会社に、その謎の調査のために雇われるという話。
前巻ではそれぞれが問題児だったエキスパートをまとめるのにショウが苦労する話でしたが、今回はショウが師匠となる彼らのフォローの上で、それらの仕事をこなさなければならなくなり、違う面での苦労を強いられています。
なんといっても一番面白いのは、本当の軍人の身代わりとして潜り込んだ先の一癖あるおちこぼれの部隊で、軍人としての腕がないことをカバーするために捻ったオリジナルの教え方と、口先でうまくそれをごまかしている部分。そこにも綿密に相手の心理を読んで把握する詐欺師一流のやり方が用いられていて、とても面白かったです。彼が何をするにも定石と呼ばれるやり方をアレンジして、詐欺師として培った技術を転用して、自分流のやり方でこなしていくのが何とも痛快。「俺たちは強くない」を部隊でのモットーにしてしまうあたりに引き込まれました。
彼がエキスパートたる自分の仲間であり師匠に、彼らの専門に関してその力を認められていく過程は、5月病と揶揄されていた仕事前の状態からの脱却とあわせて、ショウの成長物語と呼んでもいいと思います。
食糧問題という一事から、そこに張られた罠につながり、事件の裏に潜む戦争に絡んだ陰謀に絡んでいくのもよく練られていて、前作よりさらにコン・ゲームとして面白かったです。ラストも好きなんだけれど、続きは出ないのかなあ。