断章のグリム〈3〉人魚姫(上)
- 作者: 甲田学人,三日月かける
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 文庫
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シリーズ三作目。今度はアンデルセン童話の「人魚姫」がモチーフになっています。
そして今度の担当は神狩屋。掘り起こされた彼の悲しい過去の恋物語を、泡禍が作りだす悪夢へと塗り替えていってしまう手腕はさすがです。それだけに、彼と恋人との物語の終幕に何があったのか、外見的には過去として終わっているようですが、それをどうとらえているのかがすごく気になります。
人魚姫の物語の残酷な面と、伝説における人魚という存在の二面性を結びつけて、得体の知れない存在として印象づけているのが上手い。謎解きは下巻が出ないと分かりませんが、人魚姫の中ではある種の救いとしてとらえられていた泡が人に襲いかかってくるのが、どう解釈されて解かれるのか楽しみです。
描写については、血を含んだ泡が襲いかかって人間を融かしていってしまうところが何ともいえず気持ち悪い。痛みがリアルに想像できるので本当に気持ちが悪い。泡ゆえに人が介在していない不気味さというのもあり、冒頭の老婆の皮膚がズルズルと剥けていくシーンなどは痛みの描写としてこれまでの作品よりもビジュアル的にクル気がします。描写がとてもグロい方向に進化したなあ。
今回はこれまでの作品よりましな結果になるんでしょうか。彼女は救ってやって欲しいと切に思います。