スイートホームスイート3 錯綜のフリューゲルト・レポート

勢いにまかせてアデルに自分の気持ちを告白して以来、城の連中にいらん気を遣われるわ、アデルとはギクシャクするわで居心地の悪い日々を過ごす一彦。そんな生活の中、一彦は、入院中に知り合ったTVマンのロルフと偶然再会する。素朴で誠実な人柄の彼は、日本を離れた一彦にとって、初めて友達と呼べる存在となるのだが、その彼がある日「フリューゲルト城を取材をさせて欲しい」と頼み込んできて…。


シリーズ三巻目。前巻が強烈な引きだったので、どうスタートするのかと思ったらこんなとほほな扱われ方に堕してしまうとは。一彦のへたれめ。ちょっとアデルが一彦を意識する姿を見てみたかったのですが、一彦との接触を避け、自分が曾祖母であることを強調するという形での意識のされ方ではあまりにもあんまりです。
今回は城の中の取材という形で、マスコミとの関わり。セルビア・モンテネグロ出身で、その土地で起こった戦火の煽動役ともなったマスコミに、不信感を抱いているアデルの負の一面をのぞかせがらも、撮影を許可したあたり彼女も少しづつ変わりつつあるのかなあなんて感じさせられます。
城の中にカメラを入れての撮影の下準備(カメラに写らないように)からして、大まじめにやっているのに城の人外のもの達が関わってくるとなんでここまで微笑ましく、コメディタッチに感じられてしまうのでしょうか。そうやって苦心して作った準備が思わぬことで崩れて惨憺たる有様になるに至っては吹き出してしまいました。そこから一転してシリアスに流れましたが、やはりここはロルフの独壇場。自分の上司であり、好きな女性に対して、TVマンとしての誇りをかけた彼の一言がしびれます。最後は彼の一言に集約されますが、時に強大となる力の使い方の加減の難しさという物が上手く表されていたと思います。
大団円でめでたし、めでたしとなったものの、最後には、不吉で強烈な引きを残していかれました。しかし、本当に次で完結されるのが惜しいシリーズです。すぱっとシリーズを終わらせられるのもこの作家さんの魅力ではありますが。