神様のおきにいり〈3〉ぬれおんなの巻
- 作者: 内山靖二郎,真田茸人
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2006/12
- メディア: 文庫
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シリーズ三作目。海水浴編。少し離れた海水浴場に、珠江を残して向かうご一行がその先で出会うものとは…。
これまでの作品と比べてもラブコメ要素が格段に上がっていて、一緒に海に行っている皆が積極消極の差はあれど何らかの好意を見せています。中でもコヒロが凄いクローズアップされていました。大人な感じで、無表情で感情の機微が伺いにくいながらも、積極的な行動を見せる彼女が可愛らしい。他の面々も内心を吐露するシーンなどでいつもと違う面を見せるなどそれぞれ見せ場があり、その中でも露天風呂のシーンは挿絵も含めて楽しいなあ。人間や妖怪達だけでなく、縛鎖の小人達と智宏とのからみが和みます。ガリバーみたい。
今回のゲスト?は霊としての存在の力が弱い故に、誰にも認識されないまま長い間を過ごしていた濡れ女。彼女の孤独を、彼女自身のことだけで表すのではなく、智宏を皆に認識できない立場に追い込むことで前半の騒ぎと鮮やかに対比しているが故にとても印象的でした。
そして大切な彼をそんな立場に引きずり込んだものに対して、なりふり構わずやり返そうとした珠江は、妖怪の本質とはこういうものだと警告していましたが、インパクトがあるその姿には大切なものを守ろうとする姿が透けて見えてそんなに怖く感じられませんでした。妖怪の負の面を目の当たりにしても、関わるスタンスを完全に変えようとはしない智宏の姿もまた好ましい。彼の取った真摯な態度が物語の終わり方とあわせてとても爽やかな読後感を残してくれます。彼が変わらないのであれば嬉しいなあ。この先も本当に楽しみなシリーズ。