神様のおきにいり〈3〉ぬれおんなの巻

智宏たちは、兼康に「海水浴に遊びに行かないか」と誘われる。じつは海辺で起きた妖怪絡みの小事件に珠枝を呼び出したいという思惑があったらしい。しかし珠枝は海は嫌いらしく、結局、智宏と瑞穂、好香たちだけでほんとに海水浴に出かけることに。真希やコヒロも交えてバカンス気分を楽しむ智宏だが、ふとしたことで、全身ずぶ濡れのセーラー服姿の女の子と出会う。おっとりした性格の女の子はなぜか智宏を気に入った様子でつきまとってくるのだが、どうやら兼康がかかえている事件とも関わりがあるようで…?新進気鋭のスローライフ妖怪譚、第三弾は海辺で開幕。


シリーズ三作目。海水浴編。少し離れた海水浴場に、珠江を残して向かうご一行がその先で出会うものとは…。
これまでの作品と比べてもラブコメ要素が格段に上がっていて、一緒に海に行っている皆が積極消極の差はあれど何らかの好意を見せています。中でもコヒロが凄いクローズアップされていました。大人な感じで、無表情で感情の機微が伺いにくいながらも、積極的な行動を見せる彼女が可愛らしい。他の面々も内心を吐露するシーンなどでいつもと違う面を見せるなどそれぞれ見せ場があり、その中でも露天風呂のシーンは挿絵も含めて楽しいなあ。人間や妖怪達だけでなく、縛鎖の小人達と智宏とのからみが和みます。ガリバーみたい。
今回のゲスト?は霊としての存在の力が弱い故に、誰にも認識されないまま長い間を過ごしていた濡れ女。彼女の孤独を、彼女自身のことだけで表すのではなく、智宏を皆に認識できない立場に追い込むことで前半の騒ぎと鮮やかに対比しているが故にとても印象的でした。
そして大切な彼をそんな立場に引きずり込んだものに対して、なりふり構わずやり返そうとした珠江は、妖怪の本質とはこういうものだと警告していましたが、インパクトがあるその姿には大切なものを守ろうとする姿が透けて見えてそんなに怖く感じられませんでした。妖怪の負の面を目の当たりにしても、関わるスタンスを完全に変えようとはしない智宏の姿もまた好ましい。彼の取った真摯な態度が物語の終わり方とあわせてとても爽やかな読後感を残してくれます。彼が変わらないのであれば嬉しいなあ。この先も本当に楽しみなシリーズ。