断章のグリムIV 人魚姫・下
- 作者: 甲田学人,三日月かける
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 文庫
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人魚姫編完結。ワーストではないものの、バッドエンドといった感じでしょうか。いや、ひょっとしたらこれはワーストなのかもしれないなあ。しかし、あの場面でこれだけインパクトのある描写をされてしまうとしばらくあれは食えない。これまでの中でも生理的に一番受け付けないんですよ、あれ。
物語の方は人魚姫の物語を八尾比丘尼と結びつけるのはほかの作品でも見たことのあるやり方ですが、不死にさせられてしまったが故に、一人取り残される八尾比丘尼のエピソードを単独の過去話として持ってくるだけでなく、その悲哀を人魚姫のあのキャラクターの孤独と結びつけるのはただ上手いと思います。といっても不治の病を抱えて生きたいと願ったが故に歪んでしまった少女と彼女を受け止めて歪んでしまった男の二人が主役の、神狩屋の壮絶な過去話のインパクトがあまりにも強すぎて、作品のその後の印象は泡が一斉に襲いかかってきたりしてビジュアル的には大がかりなものの、どうしても薄く感じられましたが。いや、泡とか人が狂うところとか十分インパクトはあったんです、あったんですけどね…。そして、これまでの終わり方とはまた違った、ラストの何も残らないような無常観はより強く。
今回のキャストの当てはめの解釈の仕方がものすごく柔軟になされているので、作中の誰にでも起こりうるという印象もそれを加速させている気がします。候補として神狩屋と蒼衣の会話の中であがるものが常に裏をかかれていくのは物語に予定されていることとはいえ、切ないなあ。最後に残るはただ一人きりか…。
神狩屋もダークサイドにいることで、安全弁が消えて作品の緊迫感も高まった気がします。