プリンセスハーツ 両手の花には棘がある、の巻

ルシードが北へ遠征中、ロ・アンジェリー城の大公妃ジルのもとへ、愛妾(あいしょう)選考会で選ばれた美しい伯爵令嬢オルプリーヌが花嫁行列をなしてやってきた! 突然の事態にジルを除いて城は大混乱。そんななか凱旋してきたルシードは、自分の愛妾の出現に驚愕! ますます大混乱の王宮で、オルプリーヌが意味あり気な行動を…!?


仮面夫婦の下に妾候補の女性が押しかけてくるという第二巻。押しかけ妾に振り回されて、妃には突き放されてと、居場所を失いながら、一人になれるトイレに救いを求めるルシードのコミカルさが光ります。両手の花とも棘付きとは非常に可哀想。
ところで、この夫婦は朴念仁だと思っていたんですが、なんかもう意地っ張りという感じがします。互いに焼きもちという自分の感情に気づかずに相手に接しているうちに感情のコントロールが出来なくなって爆発してしまうところなんか、もうニヤニヤしっぱなし。特に涙と笑顔を奪われているので表情が乏しく、オルプリーヌがきた頃にはその言動すらも損得で勘定できるぐらい冷静で、ちょっとした内面描写でしか出てなかった奥方の感情が、最後の方では行動として爆発しているのがイイです。見事に互いの仮面が剥がれ落ちてきてる感じですね。その、すれ違いがジルの冷静なはずの判断に歪みをもたらして…なんて描写と最後の引きも上手いなあ。最後の事件の背景には切れ者のあの方が一枚かんでいそうですが、どうお話が進むのでしょうか。
しかし、コミカルな面しか見ていないんで、次の巻ではルシードのいいところが見てみたい。というか、前巻であれだけの騒動があったのに、いつも酔わされて記憶がないなんて露骨におかしな状態に置かれてもスルーしているのはあんまりにもあんまりだと思うんですが。意地っ張りさんだから仕方がないのかなあ。財政を一手に握る怜悧で冷酷に見える妃と熱血バカの王という対比を出しているんでしょうが、そこはちょっと気になりました。