ゆうなぎ
- 作者: 渡辺まさき,山田秀樹
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2008/01/28
- メディア: 文庫
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なんてことばかり書いているのもあれなんで、作品について。昔の日本を思わせるようなファンタジーな世界。そこの下町で暮らす錬金術師志望のコウと、彼とシーラによって作られたロボットの少女(厳密には違う)サヨリ、そして見た目が老化しないので実年齢の半分ぐらいにしか見えない少女?マイカの三人が織りなす物語です。他にもシリーズの登場人物は居るんですが、この巻に関してはこんなものでしょうか。やっぱりシリーズの過去作を読んでないと敷居が高いとは言わないけれど、さらっと流されてしまうけれど疑問が出てくるところがあるかなあということも感じます。過去のはもう絶版ですが、HJさん、こっちの再版も何とか…。
短編2本ということで大きな物語の動きはないのですが、物語の舞台のこのレトロな雰囲気が何ともたまらないんです。魅力と言うことでは形容しがたくて非常に挙げづらいんですが、そのほっとするような感じは健在。また、マイカは小料理屋で雇われ料理人をやってるんですが、そこで出てくる賄いの料理の描写が相変わらずとても美味しそうで、これも嬉しかったなあ。そこだけ見てると腹が減ってきます。
作品はマイカの過去話と、サヨリが感情の成長を見せるお話。
今より少し若くて、血気盛んなマイカが転がり込んだ料理屋での物語は、今のマイカが形作られた一端を見せてくれます。微笑ましい小料理屋での一幕と、たおやかな姿の裏に潜んだ店主の女性としての強さを感じる作品です。
サヨリとコウの旅先での出会いを描いた二本目では、作られてまだ年月が経ってないが故に感情というものを自分のものとして意識できず、融通が利かないサヨリに旅先の村で出会った少年・ジンタがやきもきする様が微笑ましい。ピントがずれていて時にコミカルで時にシリアスな二人のやりとりを通して、彼女が人とは違う生命であっても、同じように感情の動きが生まれているんだなと感じさせてくれるお話です。日頃は無表情な彼女の違う一面てのもいいじゃないですか。それを受けてのラストにはニヤッとさせられます。
帯にもありましたが、何となく引用。
「君は有意味な他者の期待に応えたいという欲求を、一般的になんて言うか知ってるかな?」
コウがもったいぶって質問してくる。その態度は癪に障ったが好奇心に敗けたジンタは素直に答えることにした。
「ええと……打算?」
「ハズレ。……それはだね、大切な人を喜ばせたいという気持ち……つまり『愛情』と呼ばれているんだ」
思わず顔を見るジンタに、コウは悪戯っぽい視線を返す。
「愛に生きるお人形さんたち。……浪漫だろう?」