蓮華君の不幸な夏休み1

蓮華君の不幸な夏休み〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

蓮華君の不幸な夏休み〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

久々にこの作者さんの小説読むなあと思ってたら、前シリーズ途中から積みっぱなしだった。さて、新シリーズ。

べらんめえで口の悪い主人公蓮華晴久、その割に苦労性で色々と背負い込むはめになるあたりは、デビュー作のココを彷彿とさせます。ただ、彼自身はきちんと身の処し方を分かっている大人で、舞台が現代で、トラウマを抱えているわけでもないということで印象は幾分マイルドにはなっていますが。そんな彼が入れ墨を入れた事で巻き込まれたのは入れ墨によって、物が持つ特殊な力を使えるようになった人達の超人バトルです。バトル自体はがっつり肉弾戦なんですが、力を追い求めるあまり副作用でおかしくなってしまうリスクを匂わせて影を落としているあたりは、ドラゴンの力を思い起こさせるものでもあります。
元々物事をそつなくこなせる力を持っていて、通常の入れ墨ではありえないチート気味な異能を持たされた主人公。それを取り巻く胡散臭げな方々と、どんな事に巻き込まれるのか続きが気になる面白さでありました。
そして、彼を中心に引きずり込む事になる亘理さんですが、年上の割に子供っぽく、がさつもといたくましい姿で、この人の作品のヒロインはこうでなくては!と思わせるものでした。当然のごとくとぼけたやり取りばかりで色気とかは全然ないんですが、今後どういう関係を築いていくのかも楽しみです。


全体の雑感としては舞台を現代に移したものの、物語としては原点回帰なハードボイルドテイストな作品でした。デビュー作で気に入った方はぜひ読むべきだと思います。単巻でも物語として纏まっているんですが、じっくり書かれてたのに後半ほっぽりっぱなしになった大学の友人ら、伏線的な要素も各所にバラまかれているので、今後が楽しみな出だしといった印象です。