FW 猫の棲む島

著:鷹野祐希 イラスト:九後奈緒子 レーベル:講談社ホワイトハート文庫
“呪われたゼミ”――東ノ宮大学文学部史学科の舟和ゼミを人はこう呼んだ。主催者である教授の逆指名でゼミ生が決まる。学生に拒否権はなし。小美仁――今年は彼に白羽の矢が立った。ゼミ開始の新学期もまだだというのに、小美は北九州の海の上で船酔いに苦しんでいる。舟和ゼミのフィールドワーク――民族調査のためである。目指すは中恵島。島民の数よりも島を覆うおびただしい猫、猫。異様な雰囲気のなか、恐怖の事件は起こった!!

孤島で事件!というとミステリ臭がしますが、最後まで読んでみると伝奇物というべきでしょうか。ホラーと呼ぶには少し弱いし。自分はそういうのする機会はないので、史学部のフィールドワークのやり方が事細かに記されてて、そちらの方に興味をそそられました。民俗学のうんちくも架空である島の風習のことと合って、読んでいる方に違和感を感じさせないのは凄いなあと思います。また謎を残さず綺麗に纏めたのも上手いと感じました。人の欲が呼ぶ悲劇を論破した真っ正直な小美がかっこいいです。視点が途中で散漫になるのが弱点でしょうか。