青空の卵

青空の卵 (創元推理文庫)

青空の卵 (創元推理文庫)

著:坂木司 イラスト: レーベル:創元推理文庫
僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。

引きこもりが探偵のデビュー作の文庫落ち作品。安楽椅子探偵かと思ったらそうでもないんですね。ホームズ役がワトスン役に依存していることを描写した作品はあれど、ここまで、ちょっと気持ち悪いぐらいホームズとワトスンが相互依存していることを前面に押し出した作品はあまりないんじゃないでしょうか。
話の内容は個々の謎を解き明かしながらも、主眼におかれているのは二人の関係性の変化。三部作の序章だけに大きな転機は訪れていませんが、鳥井の交遊の輪が事件ごとに広がってそれぞれが絡み合っていくのが、後ほどどう影響するのかが楽しみです。ただ、毒舌が強い鳥井のキャラクターはあまり好きになれませんでしたが。
また、根幹が崩壊するから無理ですが、二人の関係が男としては嫌な感じで、鳥井が女の子だったらよかったのにとも。いや、ちょっと友情と呼ぶには気持ちが悪いもので。
事件におけるミステリー色はあまりなく、日常系ミステリーとしての期待に関してはちょっと微妙な気がします。全部の作品についてではありませんが解決方法も好きではないものがあり、その方面についてはもうちょっとの観を受けました。皆善人であるというのが、そこに潜んだ悪意が大きく感じられ、どうにもモヤモヤするものがあります。
ともあれ、二人の関係の変化が気になるので、追ってみようと思います。