伊佐と雪 〜やさしいよる〜

著:友谷蒼 イラスト:三日月かける レーベル:GA文庫
「悪霊よ、去れ!」修験者を志す高校生・袴田幸太郎が力を込めて突き出した数珠は、しかし、何の効果も生み出さなかった。「袴田さん、お上手ですね。凄い、凄いですよ」などと拍手とともに真面目に感心されたりして―袴田が転校先で出会った2人の少年は、それでもしっかりと、普通の人間ではないのだった。母親の幽霊に育てられたという不思議な少年「伊佐」と、万年不機嫌そうな雪女の息子「雪」。そんな彼らの道行きはやっぱり怪異な事件のオンパレードで・・・。


人に比べると霊感が強いものの、霊を退治するほどのちからは持っていない袴田君が、人外である二人の元で修行することになるハートフル除霊物語。連作短編三本で構成されています。
主人公の一本気で時代錯誤気味の少年と現代に適応して生きている妖怪達のギャップのあるやり取りが面白い。特に途中から出てくる狸の霊の少年はなごみます。このあたりの日常の部分が楽しむことが出来ました。各話に出てくるヒロインが使い捨てなのはちょっともったいないなあと思いますが。
難点としては霊による事件の解決パターンが毎回一緒なのと、文章に読みにくいところがあるところでしょうか。続きはいくらでも出せそうな作りですが、主人公にもうちょっと力を持たせてあげるなりの成長をさせてあげて欲しいところ。
ほのぼのしていて、劇的な展開というものはないので安心して読める話だと思います。
なんか妖怪達がこの組み合わせだと薬屋探偵妖綺談を思い起こすなあ。