五人姉妹

五人姉妹 (ハヤカワ文庫JA)

五人姉妹 (ハヤカワ文庫JA)

著:菅浩江 イラスト: レーベル:ハヤカワ文庫
バイオ企業を率いる父によって、成長型の人工臓器を埋め込まれた葉那子には、臓器スペアとして4体のクローンが用意されていた。やがて無事に成長した彼女は、亡き父の想いをもとめ“姉妹”との面会を果たすが…クローン姉妹の複雑な心模様をつづる表題作、『永遠の森博物館惑星』の後日譚「お代は見てのお帰り」など、先端科学が生みだす心の揺れを描いた9篇。“やさしさ”と“せつなさ”の名手による珠玉の作品集。


菅さんの短編集。短編9本で構成されています。
きつい現実を突きつけられる様なタイプの作品では無いけれども、読み終わるとそこに残るのはあらすじどおり切ないもの。近未来のSF的な設定が物語のための小道具として良く機能していると思います。
作中のキャラクターの人に対する思いに強い印象を受け、暖かさを感じました。中にはハッピーエンドの作品もあるけれども、無くしてしまったもの、側になくなったものを想う作品が多くて切なさをうたう短編集として満足。
どの作品も出来がいいんだけど、表題作や、宇宙と地球に引き裂かれた恋人達の姿を描いた「箱の中の猫」、人間が死に絶えた後の世界で生活するロボット達の「KAIGOの夜」、記憶を失った少年の孤児院での生活を描いた「子供の領域」などが良かったです。ってこんなに選んだら選んだ意味がないな。