怪盗グリフィン、絶体絶命

怪盗グリフィン、絶体絶命 (ミステリーランド)

著:法月綸太郎　イラスト:　レーベル:ミステリーランド
ニューヨークの怪盗グリフィンに、メトロポリタン美術館(通称メット)が所蔵するゴッホの自画像を盗んでほしいという依頼が舞いこんだ。いわれのない盗みはしないというグリフィンに、依頼者はメットにあるのは贋作だと告げる。「あるべきものを、あるべき場所に」が信条のグリフィンがとった大胆不敵な行動とは!!(第1部)
政府の対外スパイ組織CIA(アメリカ中央情報局)作戦部長の依頼を受けたグリフィンは、極秘オペレーション<フェニックス作戦>を行うべく、カリブ海のボコノン島へ向かう。その指令とは、ボコノン共和国のパストラミ将軍が保管している人形を奪取せよというものだったが……。(第2部)

法月さんが子供にも読める作品のシリーズの一環として、書き下ろした作品。子供向きとは言えないような作品もあるこのシリーズ、作中においてミステリー論を語り、主人公が悩みを抱えて苦しんだりしている法月さんは、どんな作品を書きおろすのかと思っていました。
蓋を開けてみると、ミステリーランドが謡っているとおりの子供にも大人にも楽しめる(だろう)作品に仕上がっていました。怪盗である主人公・グリフィンの大活躍と絵画や人形を奪取する際の知恵比べ等々、由緒正しきジュブナイルの冒険ものといった趣。特にまじないの人形を巡る駆け引きでは人形を傷つけると呪いによって持ち主が死に到るかも知れないというジレンマも絡み、表から見える人間関係が塗り替えられていくのが愉快でした。
ボコノン共和国の革命の裏にあった真の姿が段々と明らかになっていき、最後に様々な謎とともに一つに収束していくのが綺麗に感じられると思います。
本当に法月さんが書いたのかと思ってしまう様な明るい作品でした。値段は高いですが、出すだけの価値はあったと思います。ただ、グリフィンがそこまで活躍した印象が強くないので、この先があれば活躍が見たい。