イケニエのロンリ THE SACRIFICE 2nd.HALF

著:榊一郎 イラスト:藤城陽 レーベル:富士見ファンタジア文庫
トリスタンの町は“生け贄”を求めていた。“黒騎士”の噂と連続魔族化事件は町をパニックに陥らせ、正義の味方を名乗る暴徒たちで溢れていた。「彼らのどちらかが“黒騎士”である可能性が高いと思われます」―何気ない口調で淡々と告げるカペルテータ。正義の味方なんてのは柄じゃない。連中が犯人だと決まったわけでもない。“黒騎士”を捕まえる義理もない。「だけど、“生け贄”を当然だと思うその価値観は―気持ち悪いんだよ」生け贄を喰らってまで生きていたくないと思ったレイオット。その魂に青白い怒りの火がともる!


先月に続く下巻。
黒騎士と対峙するところで上巻が終わり、どのように下巻を閉じるのかといったところでした。黒騎士の正体についてはそこまでの意外性はなく、ごく普通という印象。犯人の動機はかなり歪んだ感じだとは思いますが、魔族達に比べるとやはりインパクトには欠けるかなあと感じました。その面だけでいえば肩すかしでした。上巻で盛り上げにつとめていた影響が大きいからだと思いますが。
ただ、この巻で終わる話だけではなく今後につながりそうな対立構造が見えてきたり、伏線が張られているので終盤に向けての期待がふくらむ巻でもあります。
人間に絶望し、人間であることをやめてしまった源流魔法使いの、自らの過去を悔いるような独白が妙に印象に残りました。
魔族と人の間に生まれ、特異な外見を持った少女・カペルテータがこの先何らかの鍵になるんでしょうか。