戦う司書と黒蟻の迷宮

戦う司書と黒蟻の迷宮 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と黒蟻の迷宮 (スーパーダッシュ文庫)

死者の全てが結晶となった『本』が眠る、バントーラ図書館迷宮倉庫。その一角に、かつてはハミュッツと並び、エリートとして将来を嘱望されていた蟻使いの武装司書・モッカニアが住み着いていた。ある日、モッカニアは迷宮倉庫を占拠し、武装司書に反旗を翻す。その裏には、神溺教団の手先と謎に満ちた一人の女性がいた・・・。『本』を巡る、美しくもはかないファンタジー


武装司書のお話も3冊目。今回の本は暑さは薄めでちょっともったいない部分がありますが、内容はこれまでと同じように安定した面白さでした。ただ、あくまで安定ではありますが。
今回の主役はモッカニアですが、それと対になる彼を殺すために生きてきた神溺教団の男の物語が心にしみます。この二人にしか分からないものなんだろうなあ。この二人のシンクロニティが切ない。
また、このシリーズは記憶をおさめた本という設定があるせいか、他人の過去をたどらせる描写が多いんですが、それが上手く描かれていると思います。
完全に悪役として描かれている、ハミュッツ=メセタが強者を追い求める心理の一端も垣間見られて、彼女がそのようになった理由も気になるところ。いかに最強であるハミュッツを追い込むかに作者が心を砕いているので、次はどうするのかも期待というところです。