カーリー 〜黄金の尖塔の国とあひると小公女〜

舞台は1900年代中期英国領インド・海に面した小さな都市パンダリーコット。祖国イギリスを離れインドに移り住むことになったシャーロット=シンクレアは、現地の女学校で東洋の宝石ともいうべく黒い瞳の美少女、カーリーと出会う。美しくも聡明なカーリーに惹かれ、急速に親しくなっていくシャーロット。しかし、この小さな出会いが、この神秘の国に新たな風を吹かせることになるのだった。


高殿さんの新作。第二次世界大戦直前のインドの女子校でのお話。作者自ら目指したように名作劇場風の作品に仕上がっています。
序盤の、昔のイギリスのしきたりや礼儀がそのまま残る寄宿舎へ、新しい風となって入っていくヒロイン・シャーロットが痛快。真夜中のお茶会や伝統的なイジメやお堅い学園長といったものに対する彼女の一挙手一投足に釘付けになります。後半では大戦に関わる世界的な陰謀が働いていて、前半のノリは影を潜めますが、シャーロットの変わらない姿がその印象を拭っていた感じもありました。彼女が周りの世界を知り、成長していく姿も良かったです。
そしてもう一人のヒロイン(笑)カーリーもかわいらしい。いつも沈着冷静なのに、シャーロットのことになるととたんに態度が変わってしまうのは読んでいて笑ってしまいます。いつ正体が明かされるのでしょうか。
一冊の中に多くを詰め込みすぎた為、寄宿舎の描写が薄くなってしまったのは残念ですが、楽しむことができました。後半の部分はまた別でも良かった気もしますが。
インド独立運動を始め、激動する世界情勢の中で、カーリーとシャーロットの関係はどうなっていくのか。乞う続刊。