蛇と水と梔子の花

蛇と水と梔子の花 (コバルト文庫)

蛇と水と梔子の花 (コバルト文庫)

山裾に住む妖猫の夫婦には、六人の娘がいた。長女から順に縁談がまとまり、次は三女の三江の番。ところが末娘の六姫は、「絶対反対!」と大好きな姉の縁談に猛反発。やってきた花婿の白比佐を、なんとか追い返そうといろいろイジワルを始めるけれど…!?二〇〇四年度読者大賞受賞作に大幅加筆した表題作『蛇と水と梔子の花』と、六姫たち六姉妹の長女・一妃の縁談話を描いた新作一編を収録。


足塚さんのデビュー作。
猫の化身の甘えん坊の末っ子が、大事な姉の嫁入りを阻止しようと奮闘するお話。ともう一話で構成されています。
姉の婚約の邪魔をしているはずなのに、いつの間にか相手が気になってという物語の運びはほのぼのとして、六姫の姿がほほえましい作品でした。甘えん坊の彼女の成長が軸になっています。
人の姿をとっているのに、すねたり甘えたりする六姫の姿がまるで猫のよう。驚いたり、気絶すると元の姿に戻ったりするんですが、元もかわいらしい。また、他の姉妹達もそれぞれ個性が強く、家族という感じが伝わってくる触れ合いもおもしろかったです。
もう一つの方は、しっかり者である代わりに他の人を頼ることが出来ない、六姉妹の長女の一妃を主役にした、無礼な男との縁談のお話。前の話では出てこなかった姉妹も登場して、にぎやかでとっても楽しい。一妃の長女ゆえの寂しさといったものも上手く描かれていました。
お話の筋はありがちですが、コメディとして上手く仕立てられた作品でした。