結晶物語1

結晶物語 (1) (ウィングス文庫)

結晶物語 (1) (ウィングス文庫)

古びた質屋の主人・凍雨のもとに持ち込まれる品物には、色々な想いが染みついている。ところがちょっと違っているのは、その想いの主が『人』とばかりは限らぬところ。空に浮き、水に棲み、人と交わらぬ妖どもの、想いが凝った品物を、平気で預かるこの主人―凍雨にも、実は「人でなし」な秘密があった・・・。


あやかしと人間の間に生まれ、人の感情を結晶化させる能力を持ち、古物商を営む凍雨が主人公の作品。彼が関わった古物にまつわるお話、人魚姫と浦島太郎をベースにした短編二編が収められています。
人でも物でもそのものが持つ時をなめとる力を持った妖の父親と、彼と契約させられて働かされている人間の黄龍が、彼と共に動くキャラクター。主人公たちは手を貸すものの、傍観者の立場である部分が大きく、脇から進みを手伝っている感じがします。
物語を紐解くように、出てくるあやかしの心理が露わになる様が丁寧に描かれていたと思います。特に浦島太郎において、過去のちょっとした事が原因で自分を責め続けた乙姫の生き様が哀しすぎる。最終的な解決方法が記憶を奪うというのは、ずいぶんあっさりしているなあという印象ですが。
どこかが違ってしまったために、うまくいかなくなるあやかしの姿がおかしくも切なくも映る作品でした。