山姫アンチメモニクス

山姫アンチメモニクス (電撃文庫)

山姫アンチメモニクス (電撃文庫)

平凡な中学生・篠原カズキの前に現れた、不思議な美少女・山姫翠。彼女は男性を魅了し、その記憶を操る『山姫一族』の末裔と名乗り、山姫の里を抜け出した姉、風花を追ってきたという。常識が無いうえ思いこみが異常に激しい風花は「人の悩みを解決するには、イヤな記憶を抜けばいい」と思いこんでいる。このままでは町の人々の記憶が危ない!翠と共に風花を捜すカズキだったが、「アパートのトイレ掃除がイヤ」という“悩み”を風花に知られ、トイレに関する一切の記憶を抜かれてしまい…。ギャグ満載の短編連作シリーズ第1弾。


積読。こいつも1年近く熟成されてたのね。
ホラー物ばかり手がけていた三上さんが心機一転コメディに取り組んだ作品。記憶を抜く力を持った姉と、それを追いかけてやってきた戻す力を持つ妹が、主人公を巻き込んで学校で引き起こす騒動のお話。
完全に馬鹿馬鹿しいお話に徹するのかと思いきや、人の悩みの解決についてきっちり描かれていたのが印象的でした。
鈍感な主人公と、自分の感情に気付かないものの彼の行動にやきもきするヒロインの姿もいいなあ。
ただ、姉がやってる記憶を抜くことが、どうもコメディにはそぐわなくてそのあたりがいまいち。人格を変えるほどの影響力がある物を、良いことだと信じ込んで使ってずっと顧みないというのはねぇ。こういう暴走キャラクターは結構定番の物だけど、善意者であるというのがちょっと笑えないです。トイレが分からなくなる1話や4話の犬と主人公の記憶を入れ替える話みたいに、軽い物だとうまいと思うんですけど。