鬼ごっこ

鬼ごっこ (講談社X文庫 ホワイトハート)

鬼ごっこ (講談社X文庫 ホワイトハート)

十七歳の誕生日を前にした沢村莉子の周りで異変が相次ぐ―不可解な喉の渇きは治まらず、教師は謎の言葉を残し、七夕祭りの夜、友達は行方不明に!そんな中、莉子は、学園の王子様と噂される草野冬記から、彼が陰陽師の家系なのだと告げられる。七十七年ぶりに目覚める鬼を狩るため、陰陽師が動きだす!莉子に迫る危険は、何故?そしてその時、莉子を救い出した転校生・零とはいったい何者なのか。


ん?これ今月の発売だったような…。
あらすじみるとホラー的な作品なんですが、追われる立場の莉子と、追う方の手伝いをする零の両方の立場から物語が描かれているためにじわじわと追い込まれていく怖さというものはあまり感じませんでした。ホラー的というよりサスペンスといった印象があります。
作品としては自らが元々いた、守るべき生活から追い出されてしまう姿が痛ましい。前半は莉子の普通の日常が描かれているのが、その印象をいやが上にも高めています。つまらない日常だけどいつかここに帰って来る、という決意にも。
また、鬼という存在が元々、迫害されたり、敵対していた存在をそう呼び習わしていたというのは結構有名な話ですが、それを考えると冒頭に出てくる悪意いっぱいの桃太郎の話がなんとも嫌な印象に。生活を破壊され陰陽師に鬼が追われるという作品の内容と鬼ごっこというタイトルが強烈な皮肉という感じでした。
続きが出たら莉子を助け出した零との逃避行の中で、敵を迎え撃つことになるのかな。