クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。


ライトノベル以外も読んでるんなら感想かけや(意訳)といわれたので、たまには書いてみる。
横山さんの文庫落ち作品。新聞社に勤める中年の記者が、御巣鷹山の飛行機墜落事故の取材のチーフを務めるお話。
上司や営業ら他部署との角のぶつけ合いと、下からの突き上げのあいだでの、掲載する記事の取捨選択についての争いは熱い。
途中から主人公の感情の動きにちょっとついて行けないし、ラストは感傷的に過ぎると思うところもあります。それでも(多分)作者の実体験を元にした、リアルタイムの新聞社の動きと、記者たちの動きは圧巻。事件発生直後の場面から始まって、わずか数日間の出来事なのに、かなり長く感じました。
作品のもう一つの軸となる、先に山に行っていたはずの友人がいないはずの町中で倒れていた謎が、家族との関わり方として本筋の方をかすめるようにして絡まっていたのも好印象。時折挿入される、十数年後のお話が示すその先が何とも切なくなりました。
読了して一番強く思ったことは良いタイトルだなあということ。まさにこの話がタイトルのその状態。傑作でした。