待ってて、藤森くん!

待ってて、藤森くん! (富士見ミステリー文庫)

待ってて、藤森くん! (富士見ミステリー文庫)

藤森里見は待っていた。十年前、再会を誓った初恋の少女を、約束の日、約束の場所で、ただひたすら。しかし少女は現れず、待ちぼうけをくらった里見は肺炎をこじらせ一ヶ月遅れで高校に入学することに。男女比率1:9、絶大な権力を有する生徒会が存在する、私立弥生坂高等学校。元気で世話焼きな幼なじみの吉野と共に、生徒会主導の朝礼に臨んだ里見は、“三月の姫君”と呼ばれる生徒会長の指先に、十年前のさよならの時、少女に渡したオモチャの指輪を見つける。「見つけた―!」“三月の姫君”が初恋の少女と確信した里見は、制止する吉野を振り切り生徒会長に駆け寄るが、生徒会執行部“三人官女”の手によりあえなく阻止されてしまう。呆然とする里見に知らされる、弥生坂高等学校の不可思議な制度―。「里見君は、『弥生坂下克上』を知ってるかい?」学園メモリアルラブコメディ登場。


かるたさんの新シリーズ。殺人と超能力ネタを封印された作者が繰り出したのは学園もの!です。
一途で正義感が強い藤森と世話焼きの幼馴染み吉野などが入ったばかりの学校で繰り広げる騒動のお話。主人公がそんなキャラなので、トロイメライに比べると、文章面での暴走も抑え気味、小ネタなんかも比較的抑え気味でした。ゆえにコメディ色薄し、ただ、真っ直ぐな主人公のキャラクターは好みでした。いきなり暴走して約束の少女と思った生徒会長に会いに行こうとした時はどうなるかと思いましたが。
作品の中では、悪役との、悪魔のミカタを彷彿とさせるボクシングの対決シーンが見物。ピンチに追い詰められてからの闘いぶりは面白いと思うんですが、願わくばもうちょっと細かく書いてもらえれば、逆転の際の爽快感が出たと思います。
その中ではボクシングのシーンだけではないですが、幼馴染みの主人公へ絶対に負けないという無条件の信頼を寄せる姿がとても良かったです。彼女のまんま犬のようなキャラクターは、主人公ととてもお似合いといった感じでした。
話自体は続ける気満々ですし、今後への布石らしきものがいっぱいだったんで、続きにも期待。ただ、ラストの黒幕の会話はバレバレなんで要らなかった気もしますねえ。正直本当に悪人というのはあまり感じられませんし。
ところで、続巻への布石とはいえ黒河さんのスルーっぷりにはビックリしました。いなくても話成り立つんだもん、ヒロインのはずなのに。