土くれのティターニア

〈花の女神〉〈戦乙女〉そして〈恐怖の暴君〉……様々な二つ名で讃えられ、恐れられる学校一の美少女・御崎明日香が幼馴染みだったことに気が付いたとき、大賀良文は不思議な世界に足を踏み入れた。明日香は、《山のカミ》から授かった《力》を使って、山から下りてきてしまった《良くないモノ》を監視する役目を負っていたのだ。おかしくて、怖くて、ちょっぴり切ない青春怪異譚シリーズ登場!


主人公達とそれを取り巻く、見えないイキモノにまつわる短編集。
人に言えない秘密を抱えたヒロインと、一人だけそれに関わることを許された、主人公を阻むモノを退治する精霊が憑いているものの、自身は平凡な主人公。二人の関係性は結構見るものですが、この作者にかかるとそんな感じに見えないのが不思議。
美人だけれども、男勝りでどこか抜けているヒロイン、そして物事にあまり動じない主人公が作り出す作品の雰囲気は、何ともほのぼのとしたものでした。ヒロインは重いモノを背景に背負っているはずなのに、それを時折にしかみせないのもそれに一役買っていると思います。全然ヒロインと主人公の関係が変わらず、後ろに憑いている精霊さんばかり当てにされてる主人公は可哀想ですけど。4話で少しだけ態度が変わっていますが、ヒロインが主人公自身の大切さに気づくときはくるのでしょうか。
その中で、山のモノたちと織りなすストーリーは戦闘もあるのに、あまり緊迫感がなく時に切ないものでした。人に捨てられたつくもがみの話を描いた「声は響いて」が好きです。
ただ、連作短編とはいえ文庫が初出なので、キャラ紹介をいちいちする必要なかったのではないかと思います。二人の出会いの部分など冒頭の第一話の部分があまりに描写もなく、すっ飛んでいるなど、きちんと描写がしてあればもっといい作品になったのではないでしょうか。背景があまりないイラストは微妙。