断章のグリム2

市立第一高校の一年生で時槻雪乃のクラスメイトの媛沢遥火は、通学途中で怪異に巻き込まれた。自身が以前から恐怖症のように苦手としていた駐車場。そこに停まっていた車の窓に、まるで赤ん坊がこちらを覗き込んでいたかのように、白い手形が二つ浮かんでいた。彼女は、学校で腫れ物扱いされている時槻雪乃に話しかける唯一の少女だった。そして同じ頃、白野蒼衣も、<グランギョニルの索引ひき>と名付けられた、童話の形を取るほど大きな<泡禍>の予言を受けた。おそらくは雪乃も一緒に巻き込まれるだろう予言を……。かくして神の悪夢と混じり合った悪夢は、再び<童話>の形で現実のモノとなる──。


二巻目。今回はヘンゼルとグレーテルをモチーフにしたお話。
童話をいかようにして紐解き、現実に当てはめていくかの作業については抜群の面白さはあると思います。ただ、全体としては前巻よりはスケールダウンした印象。作者さんが後書きで今までの作品ではグロテスクと言われるべき作品は書いておらず!、今回(自分では)意識してグロテスクの要素を加えてみたと述べられていますが、あまり怖さには直結していない感じがします。心理面での描写が減った分、痛みを伴わない感じがするのが大きいと思います。レンジに右腕が無理矢理つっこまれていくあたりの痛みの描写は流石でしたが。
今回の犠牲者のそれまでについての描写が少ないのもあり、感情移入がなかったために、前作に比べると与えるダメージが小さく感じました。ゆえにクライマックスでも童話の解釈の方を楽しんだ部分があり、その点ではグレーテルが魔女になってしまうという解釈はビックリしました。ただ、そのあたりを考えると、怖いけれど1巻の方が引き込んでいくパワーはあったと思います。次は物語全体の進展の方も併せて期待したいところ。
断章を持った他人に共感したのち、拒絶することで相手を破滅に追いやることができる素直な主人公と、強気で意地っ張りのヒロインの爆弾みたいな関係がとても怖いなあ。悲劇の香りがします。