恋のドレスは開幕のベルを鳴らして

仕立屋『薔薇色』の店主クリスは内気な少女。着る人の心をドレスに映し出すことができるが、自分の恋には臆病で…。再起を賭ける女優マーガレット・ベルの舞台衣装を仕立てることになったクリスだが、心の闇を引き出す「闇のドレス」の存在に怯える。クリスに思いを寄せる公爵の令息・シャーロックは彼女をそっと見守るが、華やかな舞台の裏では事件の兆しが!大好評ヴィクトリア朝ロマン。


今作は舞台女優として人気が凋落しかけて、再起を賭けている女優マーガレットが仕立て屋のお客様。
完全に自信を喪失している彼女が、ドレスをまとうことによって自分の心に気付き、最後には劇の役を演じながら立ち直っていく姿がとても上手く描かれています。劇が物語にとってとても良いアクセントでした。その中では唯一、自分の利益のために女性を使い捨てにしていくキースはとてもむかつき、従って終盤のあのシーンは納得いかないんですけどね。その部分はすっきりしないものがありますが、真打ち登場という感じで彼女が出てきたときは盛り上がりました。
また、前巻で敵として現れたアイリスが作る闇のドレスの気配は感じるものの、錯綜した人間関係の中で誰がその着用者であるのかを探し当てるのが、誰がそれを着ているのかが分からず騙されてしまいました。前作とは違うこのドレスの使い方も良かったと思います。
サブで進んでいる一昔前の少女小説風味のクリスとシャーロックの恋は見ていて微笑ましくなってしまうけれど、恋することを自らに禁じているクリス自身と階級社会の壁は乗り越えられるんでしょうか。